【在宅医療の意義】
「通院は1日がかりの大仕事…」
と思われている方、いらっしゃいますか?洋服を着替えて移動して、病院や薬局では待ち時間もあって、帰ってきたらもうこんな時間…なんて話、特にご高齢の方や身体障害を持つ方には経験あるかもしれません。ご家族が診察に付き添うにも時間の都合がつきづらかったり、共に疲弊したりもあるかもしれません。
在宅診療とは医師や看護師が患者さんのご自宅を訪問して診療を行うサービスです。患者さんが住み慣れた環境で安心して生活を送れるような支援を中心に、私達はお手伝いいたします。
在宅医療の適用条件は『医療機関への通院が困難であること』です。病気の種類は関係ありません。以下に訪問診療のメリットや実際の契約の流れなどをご紹介しますので、まずはご一読ください。
【在宅医療のメリット】
1.患者さんの生活の質の向上
自宅にいながらの療養により、患者は精神的な安定を得やすく、生活の質が向上します。家族と一緒に過ごす時間が増え、家族のサポートを受けやすくなります。
2.医療の継続性
定期的な訪問により、病状の変化を早期に発見し、迅速に対応できます。退院後もスムーズに日常生活への移行ができ、再入院のリスクが減少します。
3.多職種連携
医師と看護師に限らず、ケアマネージャーや地域の薬局、訪問看護ステーション、リハビリ施設などと連携することでより良いケアが提供できます。
【在宅医療の手続きの流れ】
1.初回相談
患者さんまたはそのご家族が在宅医療を希望される場合、まずはご相談ください。患者さんの病状や居住地、生活状況や家族などの支援者関係を確認させていただき、在宅医療の必要性を評価します。
2.契約と計画作成
在宅医療の契約を結び、具体的な診療計画を作成します。診療計画には訪問診療(月1回もしくは2回、スケジュールを決めて訪問を行うこと)、診療内容などの情報が含まれます。
3.訪問診療の開始
診療計画に基づき、医師や看護師が定期的に患者の自宅を訪問します。診療内容には健康状態の確認、薬剤の処方、必要に応じた検査(自宅でできるものとしては血液検査、尿検査、心電図、簡易的なエコー検査)を行います。
なお、容態が急変した際や求めがある際には、訪問診療とは別に臨時でご自宅に伺うこともあります(こうした関わりを往診ーおうしんーといいます)。必要な薬剤の臨時処方、場合によっては医療機関への救急搬送などの対応をいたします。
【在宅医療にかかる費用】
訪問先の形態(自宅にお住まいか、介護施設入所者か)や管理人数などによっては料金に変動はありますが、基本診療費としては以下の3つの料金がかかります。
・在宅時医学総合管理料 (3700点、月1回)
・訪問診療料 (833点、診療ごと)
・処方箋料(70点、処方箋発行ごと)
保険点数上、1点=10円になります。また公的保険によって患者さんの負担は1~3割になりますので、月2回訪問診療した場合の実費負担は…
3700点+833点×2+70点×2=5506点
5506点×10=55060円(/月)
↓
1割負担 55060円×0.1=5506円(/月)
2割負担 55060円×0.2=11012円(/月)
3割負担 55060円×0.3=16518円(/月)
この基本診療費に加えて、以下のような追加加算される診療費が発生する場合は別途費用がかかります。
(主な例)
在宅ターミナルケア加算…末期がんなどの終末期医療が必要な方の場合
在宅酸素療法指導管理料…酸素ボンベやCPAPマスクなど呼吸器治療を行っている方の場合
当然に通院されるよりも料金は割高にはなります。ただし、上記の通り通院にかかる手間や時間、移動費用などを考えて比較すれば、実はそうでもないかもしれません。
在宅医療と
介護保険制度
2000年から始まった介護保険制度は、加齢や病気で介護が必要となった方の日常生活において必須ともいえる制度です。訪問看護や介護、通所介護サービス、福祉用具のレンタルや自宅改修など介護を受けて安心な生活を送れるようにすることは、我々、在宅医療を行う者にとっても重要なものと考えています。
在宅医療を受ける人が介護保険をもっておくべき理由は以下のとおりです。
1.療養上の管理や指導を受けるため
在宅医療では、医師や看護師による診療や治療は医療保険が適用されます。しかし、療養上の管理や指導を受ける場合は「居宅療養管理指導」として介護保険が適用されます。介護保険における要介護認定を受けていないと、この居宅療養管理指導の費用は自費となってしまいます。
2.介護サービスを利用するため
訪問診療を受ける人の多くは高齢者で、日常生活での介助が必要な場合があります。介護保険に加入していれば、ホームヘルパーの訪問介護や入浴介助、福祉用具の貸与など、様々な介護サービスを利用できます。介護保険がないと、これらのサービスは全額自費となり、大きな経済的負担がかかります。
3.ケアマネージャーや訪問看護師など医療・介護福祉専門職の介入がしやすくなる
本邦は医療や介護福祉の制度については、他国よりも遥かに恵まれております。ただ、その制度についてすべて理解することはなかなか難しいものです。そこで、その制度を理解してより良いサービス利用につなげてくれるケアマネージャー、実生活上に沿った指導やケアを実践できる訪問看護師などの専門職が、皆さんの生活のお手伝いをしてくれるようになると大変便利です。
つまり、介護保険に加入していれば、訪問診療と介護サービスを組み合わせて利用することで、より手厚い在宅ケアを受けられるのです。また、末期がんなど一定の要件を満たせば、訪問診療と居宅療養管理指導、介護サービスを同時に利用することも可能です。介護保険に加入しておくことで、自宅での療養生活をより円滑に送ることができます。